ご近所さん

ただのつぶやき~その2~

私が住んでいる地区は数年前に宅地分譲が行われた土地だ。

マイホームを持つ考えはなかったのだが、周辺の利便性も悪くないし、何より土地の価格が破格的に安かったので購入に踏み切った。

それから家の工事が始まった頃に息子がお腹にやってきて、私たちは3人家族になってこの町に越してきたのだった。

当時辺りには数軒しか家がなくて、毎日どこかで工事の音が聞こえていて、殺風景だった風景にものすごい勢いで家が立ち並んでいった。

家を買うきっかけは人によって様々だろうが、うちのように結婚や出産などのライフスタイルの変化がタイミングになる方が多いのか、町内には同世代の子育て世帯が多い。

近所を散歩すると、真新しい家の外観や庭が視界に入るから、ちょっと楽しかったりする。

住めば都とばかりに、あまりこだわりを持たずに家を作ってしまった事を後悔するくらい、ご近所にはモダンでお洒落な家ばかりなのだけど、その中でひと際素敵なお宅がある。

私はその家の前を通るのが好きだ。

その家は白壁のシンプルな平屋建てで、この辺ではめずらしく玄関がスロープになっている。介護の目的もかねて建てられた家だからだろう。

庭にはいろいろな種類の花や植物が植えられていて、派手ではないけど華やかで、無理がなくただ自然に出来上がったムードがあり、生き生きしているように見えるのだ。

うちにも一応庭があるけど、雑草がすぐにボウボウと生えてくるし、よっぽどまめに手入れして綺麗に保っているのだろうなと思う。

そして、その家に住んでいるご婦人が、とても素敵な女性なのだ。

年齢は60代後半くらいだと思うのだが、小柄でグレーヘアがよく似合う、清楚で飾らない雰囲気がある方だ。

同じ町内のご近所さんというだけだから、たまに会っても挨拶を交わす程度なのだけど、会うといつも良い印象だけが残る。

私と一緒に歩いている息子を見る目はいつも優しいし、人柄がにじみ出ている。

挨拶は短いコミュニケーションだから、よく知らない相手だとおざなりになってしまいそうなものだけど、ご婦人の挨拶はいつも丁寧で、元気すぎない丁度良い明るさがある。

会えると何となくラッキーって感じがして、咄嗟にあたたかいものを伝えられるご婦人の魅力に感動する。

良い歳の取り方みたいなものがあるとしたら、こういう人がモデルになるのだろうと密かに憧れている。

人の弱い部分は年齢を重ねるほど、誤魔化せなくなっていくものだと思うのだ。

意地悪な人は意地悪な顔をしているし、優しさに嘘があれば絶対どこかにほころびが出るから。

結局は何歳になっても素敵な人は素敵だ。

老いた誰かを乗せた車いすを押すご婦人を時々見かける。

家も庭もご家族も、ご婦人によって大切にされているのだろうと想像ができる。

おしまい

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